(095)虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

図書館行く度に「貸し出し中」でなかなか読めなかったのだけど先日行ったら置いてあって遂に読めて良かった。「百舌谷さん逆上する」で作者の名前を初めて知って気にはなっていたがその後あれよあれよとSF各賞を受賞してSF好きだけでなく本好きだったら知ってて当然の作家に。元々SFは興味はあるのだけど実際に読むとあまり楽しめないことが多く、本作品が面白くなかったのはSFを読むのは今後止めようという悲壮な気持ちになるぐらい期待して読んだ。結果気付いたことはやはり自分にはSFは向いてないということ、とそういうSF苦手な人間でも本作品は面白いということ。本作では「虐殺の文法」という言葉が使われていたけど、SFの文法、ミステリの文法というのもきっと存在していて自分はそのSFの文法というのがあまり好みじゃないんだなと改めて思った。SFの文法というかテクノロジーに対して昔から興味が無い。ロボットとかもそう。別にどうゆう理屈で動いているかはどうでも良くて、グレンラガンみたいに「Q 何故合体出来るのか? A 気合」な説明で十分。そういう人間が読んだのでナノテクノロジーやポッドの説明を読みながら「多分SF好きにはたまらないのかな」と流し読み。物語として優れているというよりは設定や構造が優れているというのが読後のイメージ。というよりSFの多くはそういうのが多い気がする。あらすじは面白いけど実際読むとあらすじ以上の面白さは特にないというか。勿論偏見ですが。何だかSFの悪口っぽくなったので軌道修正。本作で個人的に印象的だったのは主人公とジョン・ポールが最後に虐殺についてやりとりしている中で乱入してきたウィリアムスの言った「俺は俺の世界を守る。そうとも、ハラペーニョ・ピザを注文して認証で受け取る世界を守るとも。」という言葉。それまでのやり取りが抽象的夢想的だったのでその言葉が持つ具象性こそが余計際立った。まぁ、ネタバレ的にいうと無抵抗の女性をヘッドショットした後に吐いた言葉なので大して格好良くはないシーンなのだけど。それに関連してところでは、繰り返し出てきた「ドミノ・ピザの普遍性」という言葉は「虐殺の文法」より個人的には好き。あと「藤原とうふ店」は笑った。まぁこうゆう現実があるのであながちジョークとは言い切れないという→。色々書いたけどSF小説として傑作ではないかと。「ハーモニー」も手元にあるので読むのが楽しみ。