(148)11枚のとらんぷ

奇術ショウの仕掛けから出てくるはずの女性が姿を消し、マンションの自室で撲殺死体となって発見される。しかも死体の周囲には、奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われている小道具が、壊されて散乱していた。この本の著者鹿川は、自著を手掛かりにして真相を追うが…。奇術師としても高名な著者が、華麗なる手捌きのトリックで観客=読者を魅了する泡坂ミステリの長編第1弾。

ミステリと奇術の親和性の高さに本作を読んで初めて知った。そして読んでる途中又は読後にマジックを覚えたくなる不思議なミステリー作品。実際にネットでコインマジックをいくつか調べて実践してみたのだけど動画で見ると全然分からなくても実際やってみるとシンプル且つ意外に強引なものだったりすることが多く本作における作中作である「11枚のとらんぷ」の各トリックというか奇術のタネ明かしされたときも同じような印象を受けた。作中作ってあまり面白くないことが多いのだけど本作はトリックが分かりやすくテンポも良くて面白い。そしてその作中作が見事に作中のメインの事件と交錯する。見立て殺人にする根拠が若干弱い気もするけどそれほど気にはならないか。ただ本作を読むのは実は2回目だったりする。1回目は「11枚のとらんぷ」の途中で止めてしまった。殺人が起きるまでが少し長かったせいもあると思うが個人的にそれほど奇術のくだりに興味が持てなかったのもあると思う。マルドゥックスクランブルのカジノシーンを読んだときも思ったけどそれほど専門的な知識の説明とかに強い関心を寄せれない傾向がある。自分が興味を持ってない分野は特に。今回読んだときは一気に読めたのだけど読み返しの点で個人的には減点。
【採点】
★★★★★★☆☆☆☆(6)