(126)硝子のハンマー

硝子のハンマー

硝子のハンマー

『防犯探偵・榎本シリーズ』第1作。幾重にも張り巡らされたセキュリティを掻い潜り、オフィスビル内の最上階で介護サービス会社社長が撲殺された事件の謎を追う。物語は2部構成となっており、前半の第一部は榎本と純子があらゆる可能性を模索しながらトリックに辿り着くまでを描き、後半の第二部は事件の真犯人が犯行を実行するに至った背景と実行模様が描かれた倒叙形式となっている。2005年に第58回日本推理作家協会賞受賞。

久々の貴志祐介作品。この人が書くミステリの特徴としては実現性をとことん追求しているとこだろうか。「青い炎」ではわざわざ後書きで模倣犯が出ないようにトリックの欠陥を記述しているぐらい精密な仕掛けを考案。本作品でもそれが存分に発揮されていて、おおまかな殺害方法に関してはタイトルから推測することは可能かもしれないけどディティールまでとなると絶対無理と言い切れる。やたら具体的且つ実践的。日本の「本格」と海外ミステリを足して2で割るとこの人の作風になるような。面白さとしてはそこそこかなぁ。