(085)神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る

1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
http://www.shinchosha.co.jp/book/100150/

久々にミステリ以外も。阪神大震災に間接的に関わった人々をそれぞれ描いた短編集だけど、地震だから云々という話でもなくあくまでも抗えない圧倒的な現象のモチーフとして使われているだけで基本的にはいつもの村上春樹である。ただ、いくつかは少しだけ毛並みが違う気もした。「アイロンのある風景」と「蜂蜜パイ」は特に。具体的にといわれると難しいのだけど。あと今回読んで思ったのはやっぱり村上春樹の作品はジャズなんだなということ。それも構築された曲じゃなくアドリブ。文中の文節(フレーズ)単位では秀逸だけど全体で見るとよく分からんとことか。ただアドリブというのは良いときもあるときも悪いときもあるのだけど、ロックと違ってジャズの場合は理解出来ない自分のほうが理解力が無いということを勘違いさせてしまう高尚さがあるところも似ているような。そして結末が割りとグダグダなのもアドリブ演奏ならではというか(一応だけどアドリブの考え方は個人的な偏見です)村上春樹は凄い作家だと思うけど好きな作家と断言出来ないのもこういうとこなのかなと思ったりもする。