(084)十三階段

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

仮釈放間近の服役囚・三上純一に、定年間近の刑務官・南郷正二がとある仕事を持ちかける。それは10年前に起こった殺人事件の再調査であり、犯人とされる死刑囚・樹原亮の冤罪を晴らせば多額の報酬が貰えるというものであった。刑事罰は比較的軽く済んだものの、民事賠償で家族が困窮を窮めていた三上はその話を受ける。事件は10年前、千葉県中湊郡で起こり、ベテランの保護司夫婦が惨殺されたというものであった。犯人とされる樹原亮は、事件現場近くでバイク事故を起こし意識を失っていたところを発見され、状況証拠によって犯人とされ死刑判決を受けていた。ところが、樹原自身はバイク事故の影響で「階段を上っていた」というおぼろげなこと以外、事件前後のことを思い出せなくなっていた。死刑執行まであと約3ヶ月。樹原の言う「階段」をヒントに三上と南郷は中湊郡で調査を始める。やがて、三上と事件の意外な共通点が浮かび上がってくる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/13%E9%9A%8E%E6%AE%B5

「あなたの生涯の罪、全能の神に背いたことを悔いますか」
「はい」
「われは、汝の罪を赦します」
その神の言葉を聞いて、南郷は頭を殴られるような思いだった。
百六十番の犯した罪を、神は赦したが人間は赦さない。

最近「ジェノサイド」が話題沸騰の高野和明のデビュー作。解説で宮部みゆきが書いていたように新人らしからぬ完成度。最後まで面白かった。いわゆる社会派ミステリーなんだけど徐々に追い詰めつつも驚きの仕掛けもあって色んなファンが読んでも楽しめると思う。根本のテーマに日本の死刑制度があって、死刑というシステムでは殺人者の「殺人者」が発生するというのは面白い観点だと思ったし死刑制度の問題なのだろうなと思った。あと日本の絞首台は別に十三階段じゃないとのこと。死刑制度そのものがテーマではないけどカポーティの「冷血」も合わせて読むと色々考えさせるものがあるかもしれない。個人的には「冷血」のほうが淡々と描いてて好きだけど。