(037)苦役列車

苦役列車

苦役列車

小説書きとして、終わりたかった。

以前から読みたいと思っていたが、図書館では「貸出中」ばかりで今頃読む。本作者の作品は初めて読んだのだけどとにかく面白かった。色々書きたいところなのだけど難しい。「苦役列車」と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」という2編から成るのだけどこの構成は過去と現在を補完する上で非常に良かったと思う。近代文学現代文学の文体が混在しているような文章で、町田康の小説を読んでいるときと同じような印象(読みにくいようで読みやすいというテンポ感)が個人的にあった。他には「苦役列車」の稿では林芙美子の「放浪記」を、「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の稿での小説への想いを吐露する場面では浅田二郎のエッセイをそれぞれ思い出した。模倣とかいう話ではなくて、ストレートな独白であるようで様々な要素を含んでいるので色々想起させるものがあるのかもしれない。人によっては全く感想が違うと思う。私小説というジャンルはあまり読んだことが無いので適当なのだけど同ジャンルの他作品に比べても圧倒的な強度なんじゃないかと思う。というより言葉通りの自分語りの私小説では決して無いと思う。例えとして妥当か分からないけど女性エッセイ漫画における西原理恵子だったり、厨二的オタトークにおける平野耕太の存在に近いんじゃないかと思った。他の作品も是非読んでみたいところ。でも近所の図書館には無かった気がするけど。