(031)ABC殺人事件

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

クリスティ作品2本目。結末の衝撃度は前回読んだ「オリエンタル急行殺人事件」と比べるとそれほどじゃなかったけど、相変わらず面白かったです。
本作品では「ある人物」が特定の状況に置かれた時にある行動を起こすだろうという推測の元に行われるトリックがあって、他のミステリでもそういうトリックはしばしばあるけれど個人的にはあまり好きではない。完璧な殺人(と完璧な文章と完璧な絶望も)が存在しないのは分かるけれども、少し雑じゃないかと思ってしまう。
クリスティ作品を2本読んで思ったのは現代ミステリと比べるとある面では非常に読みやすくて、ある面では読みにくいところがあったように思う。その関係は初期パンクのシンプルさが好きな人もいれば、ポストロックの複雑さが好きということと置き換えてみることも出来そうな気がする。個人的にはどちらが好みというのはまだ無いけども、本作を読むとミステリのシンプルな魅力が味わえた気がした。もう少しスタンダード作品はいくつか読んでみたい。