(017)葉桜の季節に君を想うということ

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

このミステリーがすごい! 2004年版第1位。
ある日、俺は駅のホームで自殺しようとしていた麻宮さくらを止めて以来交際が開始する。同時期にジムに通っていたある久高愛子から悪徳業者への調査を依頼された。

作品内の記述よりも固定観念こそがミスリードという例ですな。個人的にはプロ野球の記述で引っかかりつつもスルーしてしまったのが少し悔しい。出版直後に読んだら絶対気付いたはずなんだけどなぁ。連載当初から「あぶさん」が好きな人はその違和感に分かるかもしれない。それでも結論に結びつけるのは難しいとは思うけど。
結末はああいう形で締めるとは思わなかった。もう少し悪徳業者を成敗するまでしっかり書くかなと思ったので。まぁ確かに結論は出しているし、あの仕掛けをバラした後はそれ以上のトリック上の盛り上がりが無いのはたしかだろうから良いとは思うけど。
騙されたというよりはその発想は無かったわという感心した気分。設定に無理があるだろうという人や生理的嫌悪感がある人はいるかもしれないけど、数々の叙述トリックの中では全然フェアなほうだと思うけど。少なくとも個人的には違和感を感じない書き方だったのですんなり納得出来た。男性と女性で感想は違いそうだね。
最近作者のデビュー作である「長い部屋の殺人」を読んだのでそこから成長ぶりに勝手に嬉しく思ったり。踏襲しているところもあれば、そうでないところもあって面白い。そういうのも本の楽しみだなと思う。