(140)光媒の花

光媒の花

光媒の花

印章店を細々と営み、認知症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く……。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?(隠れ鬼)/共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう。(虫送り)/20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男。(冬の蝶)など、6章からなる群像劇。

短編集としては佳作。だけどミステリの道尾作品!と期待して読むと少し物足りない。連城三紀彦とかもそうだけどミステリ作家がだんだん純小説家としてスライドしていく過程を見ていくのは若干の寂しさが。最近思ったこととしてはミステリはパンクロックに置き換えれるのかなと。若いうちはテクニックよりもアイデア勝負とか。でも結局マーケットとしてパンクロックはあくまでもロックのマイナー寄りのジャンルの1つであるようにそこでそのマーケットのパイの取り合いを続けるのかどうかとか色々当てはめて想像したりする。全然本編の感想じゃないし。