(021)聖の青春

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

この年の将棋年鑑で、棋士全員に送るアンケートの項目の中に
「神様が一つだけ願いをかなえてくれるとしたら何を望みますか」
というものがあった。
それに対して、村山はたった4文字でこう答えている。<神様除去>
それは、なんとも美しくも悲しい問答であった。

棋士村山聖の一生のノンフィクション。これが原作の山本おさむの漫画は読んでたけど、原作は初めて読んだ。小説と違って悲しい結末が既に分かるノンフィクションは読むのは少し辛い。
将棋は小学校ぐらいに少し打っただけで多少ルール覚えているぐらいなのだけど、将棋経験関係無く読める非常に秀逸なノンフィクション。森師匠との交流など見所は多いのだけど、個人的には亡くなる年(1998)のワールドカップを見ていたという下りで、自分もワールドカップを見ていたので感傷的な気持ちになってしまった。
余談だけど三月のライオンで村山聖をモデルにした二階堂君を羽海野チカが死なせられるかどうかというのはこの作品において重要なポイントだなと連載当初からずっと思っている。ハチクロでは死んだ登場人物はいるけどあくまでも作中の過去の時系列で亡くなっただけで登場人物がいきなり死ぬということは無かったので、今作でどうするのか気にはなっているのだけどどちらの展開も有り得るような。というか作者の後書き漫画を読んでいるとキャラクターを殺したら精神的に不味くなりそうな気もする。でもキャラクター愛ゆえにノダメのシュトレーゼマンが難聴になりそうな展開にしておいて気のせいだったみたいな展開は絶許。萩尾望都に影響を受けた羽海野チカ萩尾望都作品が好きだった村山(をモデルにした登場人物)を描くというのも面白い縁だなと思う。そして余談のほうが長い。